「今日が終わったね.ティム・キャンピー.」



夏色レインドロップ



 そう呟いてアレンは腕の中のゴーレムをぎゅっと抱きしめた.

 白い枠の窓の先は真っ暗で、道形に点々と数えられる程度の明かりが見える.

 毎晩のように降る雨で霞む世界をアレンはただじっと見つめていた.

 師に連れられて訪れたこの地は前の街とは随分違う.

 まさに"田舎"と呼ぶに相応しい村だった.

 不便でしょうがないし、良いところといえば海のそばだということくらい.

 到着したその日から師は毎晩出掛けるようになった.

 何処へ行っているのかは、正直知りたくない.

 同じくその日から、出窓の前に椅子を置いて、何も語らない真夜中の村を見ることがアレンの日課になった.

 「今日は帰ってくるかな、師匠.寝てるの?ティム・キャンピー.」

 アレンはもう一度強く抱きなおした.

 なんだか寒いような気がする.

 日が昇っている間は溶けそうなほど暑いのに、夜になると急に風が冷たくなる.

 その温度差もまた、アレンは嫌いだった.

 "心細い"という名の感情をまだ知らないアレンは、

 潮風のせいか、と結論付け頼りない身体を縮めてただただ窓の外を見つめ続けるのだった.

 ふいに窓の向こうの自分が泣いているように思えてアレンは首を振った.

 目元が熱くなって、かと思えば急に息苦しくなる.

 カツン、と耳の奥に響いた靴音に弾かれるようにアレンは立ち上がった.

 ふり落とされたゴーレムは床の上で、なおも動く気配が無い.

 構わずに椅子をテーブルの隅に戻し階段を駆け上る.

 ここで音を立ててはいけない.

 ドアを開けるときもベッドに潜りこむときもなるべく音を立ててはいけない.

 布団を頭まですっぽり被ってアレンはぎゅっと目を閉じた.

 それとほぼ同時に階下でドアの軋む音が無遠慮に響いた.

 クロスは徐に窓に近づき溜息をひとつ.

 「師匠の命令ひとつ聞けないのか、あいつは.」

 そして足下に転がるゴーレムを蹴飛ばした.

 窓枠に残されたランプはまだ温かかった.





 眠れない





 ねむれない





 眠りたくない





 あなたが帰ってくるまでは





師匠の帰りを待ってる仔アレって萌えませんか?(聞くな
師匠の名前って打つの恥ずかしくなるんですけど(え
07.09.02